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東京高等裁判所 平成31年(ネ)第1162号 国家賠償請求控訴事件 判決
 (第16民事部 萩原秀紀裁判長)
 (引用されている原判決中の箇所(下線の箇所)を溶け込ませています。)

 

 

令和元年8月1日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 ・ ・ ・ ・
平成31年(ネ)第1162号 国家賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第15609号)
口頭弁論終結の日 令和元年5月28日 
              判       決
  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
     控 訴 人(原告)          X
     同訴訟代理人弁護士          ・   ・   ・   ・
  東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
     被控訴人(被告)           国
     同代表者法務大臣           山   下   貴   司
     同指定代理人              ・   ・   ・   ・
     同                 ・   ・   ・   ・
              主       文
         1 本件控訴を棄却する。
         2 控訴費用は控訴人の負担とする。
             事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人は,控訴人に対し,1124万7526円及びこれに対する平成29年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要(用語の略称及び略称の意味は,原判決に従う。以下同じ。)
 1 控訴人は,亡母が行っていた貸金業者との取引に関して,司法書士法3条2項各号のいずれにも該当する司法書士(前訴被告)に債務整理事務(過払金返還請求を含む。)を委任し,前訴被告は,株式会社武富士(武富士)に対し,元利合計242万7705円の過払金の返還を請求したが,武富士の会社更生手続開始の申立てまでに過払金が返還されず,同更生手続による管財人からの弁済金9万3496円を除き過払金の返還を受けることができなかった。そこで,控訴人は,前訴被告に対し,過払金の額が司法書士法3条1項7号,裁判所法33条1項1号に規定する額である140万円を超えることが判明したにもかかわらず,前訴被告が漫然と武富士との交渉を継続したため過払金の返還を受けることができなかったなどと主張して,債務不履行又は不法行為等に基づき,348万8307円(第一審の段階では317万1189円)及び遅延損害金の支払を求める訴え(前訴)を福岡地方裁判所久留米支部に提起した。同裁判所は,11万円及び遅延損害金の支払を求める限度で請求を認容する判決をし,控訴人と前訴被告の双方が控訴したところ(前訴控訴審),福岡高等裁判所は,前訴被告敗訴部分を取り消し,控訴人の請求を全て棄却する判決をしたことから,控訴人が上告及び上告受理申立てをしたが,最高裁判所の上告棄却兼不受理の決定により,前訴控訴審判決は確定した。
   その後,控訴人が,確定した前訴控訴審判決には判断の遺脱があるとして福岡高等裁判所に再審の訴えを提起したところ,同裁判所は,判断の遺脱はないとして再審請求を棄却する決定をした。これに対し,控訴人は,特別抗告をするとともに抗告許可の申立てをしたが,同裁判所は抗告を許可しない決定をした。この決定に対しても,控訴人は特別抗告をしたが,最高裁判所はいずれの特別抗告についても棄却する決定をした。
   本件は,控訴人が,@前訴第一審を担当した福岡地方裁判所久留米支部の裁判官,A前訴控訴審を担当した福岡高等裁判所第4民事部の各裁判官,B前訴再審を担当した同裁判所第2民事部の各裁判官,C前訴抗告許可申立てを担当した同部の各裁判官(これらの裁判官を総称して前訴担当裁判官)について,いずれも強引に控訴人を敗訴させようとの違法ないし不当な意図をもって,殊更に歪曲した裁判を行ったものであるなどと主張して,国家賠償法(国賠法)1条1項に基づき,被控訴人に対し,損害賠償金1124万7526円及びこれに対する最終の違法行為の日(前訴抗告許可申立てに対する不許可決定の日)である平成29年2月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
   原審は,前訴担当裁判官が,その付与された権限の趣旨に明らかに背いて行使したものと認め得るような特別の事情があると認めるに足りないとして,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴した。
 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の2ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。

 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
  (1) 当事者等
    前訴被告は,司法書士法3条2項各号のいずれにも該当する司法書士(以下「認定司法書士」という。)であり,平成15,16年頃,原告の自己破産の申立書の作成や原告の弟であるN(以下「N」という。)の債務整理の手続を受任したことがあった。
    原告の母であるK(以下「K」という。)は,武富士,株式会社ライフ(以下「ライフ」という。),株式会社ポケットカード(以下「ポケットカード」という。)等との間で,継続的な金銭消費貸借取引等を行っていたところ,平成20年7月11日に武富士に対する約定元利金を完済した。
    Kは,平成21年1月9日に死亡した。Kの法定相続人は,長女の原告及び長男のNの2名のみであり,両名の相続分は各2分の1であった。(甲1,6,7)
  (2) 委任契約の締結等
    原告は,前訴被告に対し,平成21年4月9日,電話で,貸金業者からK宛てに請求書が届いており,Kに債務があるようなので相談したい旨連絡した。これを受けて,前訴被告は,原告に対し,翌日に事務所に来るよう伝えた。
    原告は,同月10日,前訴被告の事務所を訪れ,Kの債務について相談した。原告は,前訴被告から相続放棄の手続についても説明を受けたが,結局,債務整理をする方向で前訴被告と委任契約(以下「本件委任契約」という。)を締結することとなり,@原告が前訴被告に対して着手金として1契約につき3万円を依頼後1年以内に支払うこと,A過払いとなった場合には,更に過払分の20%を報酬として支払うこと,B原告が上記の着手金や報酬等を契約どおりに支払わないときは,前訴被告は,その支払があるまで事件処理の中断等ができることなどが記載された契約書を作成した。(甲1,6,7)
  (3) 原告による相続放棄申述書の提出
    原告は,平成21年4月10日,福岡家庭裁判所久留米支部において,自らを申述人とし,Kを被相続人とする相続放棄申述書,及びNを申述人とし,Kを被相続人とする相続放棄申述書を提出した(以下,これらの申述書に係る相続放棄の申述を「本件各相続放棄の申述」という。)。なお,これらの申述書は,Nの署名部分を除き,いずれも原告が記載したものである。(甲1,6,7)
  (4) 前訴被告による過払金返還請求通知書の送付等
    前訴被告は,武富士,ライフ,ポケットカード等に対し,平成21年4月10日,Kの相続人である原告を依頼者として,原告の債務につき司法書士法3条1項7号所定の業務につき委任を受け,裁判外の和解業務を遂行することになった旨,及び依頼者と貴社との取引経過等に関する書面の開示を求める旨が記載された同日付けの通知書を発送した。
    その後,前訴被告は,上記貸金業者から取引履歴の開示を受け,これに基づき利息制限法所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当したところ,ライフについては元利合計9万0116円の過払金が,武富士については元利合計242万7705円の過払金が,それぞれ発生していると試算されたため,上記各金額の過払金の返還を請求する旨の記載のある過払金返還請求通知書を,ライフに対しては原告の代理人司法書士として同月20日付けで,武富士に対しては原告の書類作成代理人司法書士として同年6月5日付けで,それぞれ送付した(以下,これらの通知書のうち武富士に対して送付したものを「武富士過払金返還請求通知書」という。)。
    そして,前訴被告は,原告に対し,同年10月8日,電話により,武富士の過払金の金額,武富士の担当者から,請求額の半分以下の額を毎月2万円以下の分割払で支払う旨の提案を受けたこと,同月15日まで待ってほしいと言われたことなどを連絡した。(甲1,6,7)
  (5) Nについての相続放棄の申述の受理等
    本件各相続放棄の申述は,添付書類の不足等のため受理が留保されていたが,平成21年11月9日,Nについての申述が受理され,また,その頃,原告は自らについての申述を取り下げた。前訴被告は,平成22年1月,Nの相続放棄申述受理証明書を受領した。
    前訴被告は,同年3月11日から同年7月2日までの間に,Kの相続関係の戸籍謄本を取得し,また,その頃,武富士の現在事項全部証明書を取得するとともに,原告の武富士に対する過払金返還請求事件の訴状の原案を作成した。もっとも,原告が武富士に対して過払金の返還を求める訴えは提起されなかった。(甲1,6,7)
  (6) 武富士の会社更生手続開始の申立て等
    武富士は,平成22年9月28日,東京地方裁判所において,会社更生法に基づく更生手続開始の申立てを行い,同年10月31日,更生手続開始の決定を受けた。これを受けて,前訴被告は,武富士の管財人に対し,債権額を283万3184円とする平成23年2月22日付けの更生債権届出書を提出した。武富士の管財人は,当初,原告の届出に係る更生債権を否認していたが,その後これを撤回し,同年7月22日付けで,確定債権額を283万3184円,第1回弁済額を9万3496円とする更生債権の弁済計画に関する書面を前訴被告に送付した。(甲1,6,7)
  (7) 前訴被告とライフとの間の和解
    前訴被告とライフとの間で,平成23年5月26日,ライフが原告に対して4万円を同年7月29日限り支払う旨の内容の和解が成立し,前訴被告は,同日までにライフから和解金4万円の支払を受けた。(甲1,6,7)
  (8) 本件委任契約の解除等
    ・・・・弁護士(本件訴訟の原告訴訟代理人)は,原告から委任を受けた代理人として,前訴被告に対し,平成24年7月17日付けの「ご通知」と題する書面により,前訴被告が原告について行った事務に関して作成保管する書類の送付を求めるとともに,同月18日付けの解任通知書により,本件委任契約を解除する旨を通知した。
    なお,原告が前訴被告に対して本件委任契約に関して着手金その他の金銭の支払をしたことはなかった。(甲1,6,7,弁論の全趣旨)
  (9) 武富士から原告に対する過払金の支払
    武富士の管財人は,平成24年8月31日,原告の預金口座へ第1回弁済額として9万3496円を振り込んだ。(甲1,6,7)
  (10) 前訴の提起
    原告は,平成25年6月25日,前訴被告に対し,過払金の額が司法書士法3条1項7号に規定する額である140万円を超えることが判明したにもかかわらず,前訴被告が漫然と武富士との交渉を継続した結果,武富士の会社更生手続開始の申立てまでに過払金の返還を受けることができなかったことや,債務整理事務の放置などを主張して,債務不履行又は不法行為等に基づき,317万1189円及び遅延損害金の支払を求める前訴を福岡地方裁判所久留米支部に提起した(福岡地方裁判所久留米支部平成25年(ワ)第236号損害賠償等請求事件)。(甲1,6)
  (11) 前訴第一審判決の内容
    前訴第一審においては,弁護士に引き継ぐべき義務の違反の有無,迅速処理義務違反の有無,これらの義務違反と損害との因果関係の有無等が主要な争点となり,福岡地方裁判所久留米支部は,平成27年3月25日,原告の請求について,11万円及び遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却する旨の判決を言い渡した。
    同判決は,@争点に関する当事者の主張として,弁護士に引き継ぐべき義務の違反の有無につき,Nの相続放棄の申述が受理されたのは平成21年11月9日であり,原告が主張する同年6月5日の時点では,いまだ原告の相続した過払金の額が140万円を超えることは確定していなかった旨の前訴被告の主張を摘示した上,A本件各相続放棄の申述手続への前訴被告の関与を7点の論拠を挙げて否定し,B前訴被告が武富士に対し同日付けで242万7705円の過払金の返還請求をしたことを認定するとともに,その証拠として武富士過払金返還請求通知書を掲記し,C原告及び前訴被告の各本人尋問の結果を踏まえ,大筋としては前訴被告の主張に沿った事実を認定した。
    そして,結論として,原告がKを単独相続することが確定した時期は同年11月9日であるところ,本件各相続放棄の申述手続に関与していなかった前訴被告にとって,Nの相続放棄の申述手続の帰趨は不分明であり,同年6月5日の
  時点においては,いまだ控訴人が武富士に対して140万円を超える過払金請求をすると確定したとはいえないから,前訴被告が直ちに事務の取扱いを中止すべきであったと認めることはできず,  弁護士に引き継ぐべき義務の違反があったとはいえない,原告の単独相続が確定したことを前訴被告が知った時期は同年12月暮れ頃であり,平成22年1月にその受理に関する家庭裁判所発行の書類を受領したのであるから,その後弁護士に事務処理を引き継いだとしても,武富士の更生手続開始申立てまでの約8か月間に過払金を全額回収できたとは認められないとして,原告が武富士から過払金の返還を受けられなかったことについての前訴被告の責任を否定し,他方で,原告のものではない印鑑を使用したこと,ライフから返還された過払金4万円を原告に引き渡さなかったこと,債務整理事務の処理の遅滞等を認め,前訴被告に対し慰謝料10万円及び弁護士費用1万円の支払を命じた。(甲1,6)
  (12) 前訴控訴審判決の内容
    前訴第一審判決に対して,原告と前訴被告の双方が控訴したところ(福岡高等裁判所平成27年(ネ)第434号損害賠償等請求控訴事件),福岡高等裁判所第4民事部は,平成28年5月13日,前訴被告の控訴に基づき,原判決中前訴被告敗訴部分を取り消し,原告の請求を棄却するとともに,原告の控訴を棄却する旨の判決を言い渡した。
    同判決は,@前訴被告が武富士に対して平成21年6月5日頃に242万7705円の返還を請求する旨の記載がある武富士過払金返還請求通知書を送付した事実を認定するとともに,Aその時点では,Nの相続放棄の申述は受理されておらず,原告が武富士に対して主張し得る過払金返還請求権の額が140万円を超えるものであったことが明らかであったとはいえないから,その時点で委任事務に係る紛争の目的価額が140万円を超えていたことをいう原告の主張は前提を欠くとし,B武富士過払金返還請求通知書は,過払金242万7705円のうち原告が相続分を有する範囲の返還を請求するものであったと合理的に解釈するのが相当であり,その記載をもって本件委任契約に係る紛争の目的価額が140万円を超えることが明らかであったとはいえない旨判断した。なお,C平成15,16年頃に前訴被告がNの債務整理を受任していたか否か,D本件各相続放棄の申述手続に前訴被告が関与していたか否か,E武富士過払金返還請求通知書が送付された平成21年6月5日頃以降同年10月頃にかけて前訴被告が武富士と140万円を超える額の過払金返還の交渉を行っていたか否かについては,これらの事実が認められるとの判断は示されていない。
    そして,同判決は,前訴被告の主張にほぼ沿った事実を認定し(なお,前訴被告が原告に対して事務処理の進捗状況等を報告したか否かについて,原告の主張を排斥した理由の補足説明がされているが,それ以外に事実認定の理由は述べられていない。),
  前訴第一審が義務違反行為を認定した,控訴人のものでない印鑑を使用したこと,ライフから返還された過払金4万円を引き渡さなかったこと,債務整理事務の処理の遅滞等も含めて  ,前訴被告の行為に債務不履行又は不法行為を構成する点があるとはいえないとして,原告の主張はいずれも理由がないと判断した。(甲1,6,8)
  (13) 前訴再審の提起
    原告が前訴控訴審判決に対して上告及び上告受理申立てを行ったが,最高判所第二小法廷は,平成28年9月30日,上告棄却兼不受理の決定をし,前訴控訴審判決は確定した。
    そこで,原告は,同年10月31日,前訴控訴審判決には,民訴法338条1項9号所定の再審事由(判決に影響を及ぼすべき重要な事項についての判断の遺脱)があるとして,前訴再審を提起した(福岡高等裁判所平成28年(ム)第32号損害賠償等請求再審事件)。
    原告が主張する具体的な再審事由は,@主要事実たる規範的要件(注意義務違反)の評価根拠事実と位置付けられるとする「前訴被告が,武富士過払金返還請求通知書が送付された平成21年6月5日頃以降同年10月頃にかけて,武富士に対する140万円を超える過払金返還の交渉の法律事務を取り扱っていた事実」の判断の遺脱,A主要事実たる規範的要件(注意義務違反)の評価根拠事実と位置付けられるとする「前訴被告が,武富士過払金返還請求通知書により,武富士に対する140万円を超える過払金返還の請求の法律事務を取り扱っていた事実」の自白の成立についての判断の遺脱,B重要な間接事実と位置付けられるとする「前訴被告が,本件各相続放棄の申述手続に関与していた事実」の判断の遺脱,C重要な間接事実と位置付けられるとする「前訴被告が,本件委任契約の締結に先立って,Nの債務整理を受任していた事実」の判断の遺脱の4点であった。(甲2)
  (14) 前訴再審棄却決定等
    福岡高等裁判所第2民事部は,平成29年1月26日,前訴控訴審判決が上記(13)@及びAの事実に関する認定判断をしていることは明らかであり,また,同Bの事実については,これが認められないとして認定しなかったものであり,
  かかる消極的認定を前提に本件委任契約に係る紛争の目的価額が140万円を超えることが明らかであったとはいえず,また,前訴被告においてそのような認識を有していたものとは認められないとの認定判断をしていることが確定判決の判文上明らかであって,この点について判断遺脱はなく,同Cの事実は,主要事実の間接事実として位置付けられるものとはいい難い上,仮にBの事実を推認させる間接事実と位置づけ得るとしても,Cの事実から直ちにBの事実を推認することも困難であり,いずれもその判断を欠くことによって判決に影響を及ぼすものとは到底解されず  ,前訴再審請求は理由がないとしてこれを棄却した。
    前訴再審棄却決定に対し,原告は,
  平成29年2月21日,  特別抗告をするとともに,前訴抗告許可申立てをしたが(福岡高等裁判所平成29年(ラ許)第11号事件),福岡高等裁判所第2民事部は,同年2月22日,原決定には民訴法337条2項所定の事項が含まれているものとは認められないとして,抗告を許可しない決定をした。この決定に対しても原告は特別抗告をしたが,最高裁判所第二小法廷は,同年6月7日,いずれの特別抗告についても棄却する決定をした。(甲2,3,4)
 3 争点
  (1) 裁判官の職務行為についての国賠法上の違法性の判断基準(争点1)
  (2) 前訴担当裁判官の職務行為についての国賠法上の違法性等の有無(争点2)
  (3) 前訴担当裁判官の職務行為と原告の損害との間の相当因果関係の有無(争点3)
  (4) 原告の損害(争点4)
 4 争点に関する当事者の主張
  (1) 争点1(裁判官の職務行為についての国賠法上の違法性の判断基準)
   (原告の主張)
    裁判官の行う司法作用に係る国賠法上の違法性の判断基準については,最高裁昭和53年(オ)第69号同57年3月12日第二小法廷判決・民集36巻3号329頁(以下「昭和57年最判」という。)のように,他の分野についての解釈基準(いわゆる職務行為基準説)よりも更に限定すべきとする先例(いわゆる違法限定説)があるところであるが,
  違法限定説の根拠は,裁判の違法は上訴,再審等の制度を利用して当該訴訟手続内で解決することが原則として予定されているところにこそあると理解されるから,  前訴のように,訴訟当事者が上訴,再審の手続を正当に尽くしてもなお裁判の瑕疵が是正されなかった場合,あるいは,上訴,再審の制度が正常に機能していない場合などには,職務行為基準説に基づいて国賠法上の違法性を判断すべきである。  仮に,違法限定説に拠るとしても,法的瑕疵ある裁判官の行為が,故意,悪意ないし意図的であった場合だけでなく,裁判の内容が杜撰であるなど著しく過失がある場合,国民の司法制度に対する信頼を損ないかねないような著しい不合理や逸脱がある場合にも,昭和57年最判のいう「特別の事情」があるものとして,国賠法上の違法性の要件は満たされると考えるべきである。
   (被告の主張)
    国賠法1条1項にいう「違法」とは,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することをいい,国賠法上の「違法性」が認められるためには,当該公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要である。
    取り分け,裁判官がした争訟の裁判について,国賠法上違法なものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには,裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在するだけでは足りず,当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする。
  (2) 争点2(前訴担当裁判官の職務行為についての国賠法上の違法性等の有無)
   (原告の主張)
   ア 前訴第一審
    (ア) 前訴被告から書証として提出された武富士過払金返還請求通知書には,前訴被告が武富士に対して過払金242万7705円の返還を請求する旨の記載が存在し,これは前訴被告が認定司法書士の権限を超えて法律事務を取り扱っていた事実そのものを明らかに示すものであるから,事案解明のための最重要基本書証と位置付けられる。前訴第一審の担当裁判官は,口頭弁論終結前は武富士過払金返還請求通知書の存在とその記載文言を前提とする審理を行っていたにもかかわらず,判決においては,その存在を無視し,武富士過払金返還請求通知書があたかも存在しないかのような事実認定をした。
    (イ) 前訴被告は,前訴第一審において,Nの相続放棄の申述が受理されたのは平成21年11月9日であり,同年6月5日時点ではいまだ原告の相続した過払金の額が140万円を超えることは確定していなかった旨の主張又はこれに類する主張は全くせず,むしろ,逆に,140万円を超えるため認定司法書士の権限を超えると原告に説明していたなどと述べていたにもかかわらず,前訴第一審の担当裁判官は,判決において,前訴被告が上記主張をしたと摘示した。
    (ウ) 原告は,本件各相続放棄の申述手続に前訴被告が関与していた事実を主張し,前訴被告はこれを否認した。前訴第一審における主張立証の全体像からすれば,この事実の存否は,明らかに事案解明のための最重要の間接事実と位置付けられるべきものである。前訴第一審の担当裁判官も,判決においてかなりの重点を置いて検討し,7点もの論拠を挙げてこれを否定した。しかし,これらの論拠は,いずれも成り立たないことが一見して明らかな稚拙で的外れなものばかりであり,この事実を否定するため無理矢理なこじつけをしていることは自明である。
    (エ) 前訴被告本人尋問の結果を見れば,前訴被告がつじつまの合わない説明をしていることに自ら気付いて動揺したり,答えにつまったり,供述内容が二転三転する様子がはっきり表れており,前訴被告が虚偽の陳述をしていることは一見して明らかであるにもかかわらず,前訴第一審の担当裁判官は,この点に触れることなく,大筋で前訴被告の主張に沿った事実を認定した。
    (オ) 前訴第一審の当事者尋問の調書について原告訴訟代理人が調書訂正の申立てをすると,担当裁判官はその一部につき訂正したが,口頭で欠落を認めつつも調書の訂正を拒んだ箇所もあり,裁判官主導による調書の操作等があったのではないかと疑わざるを得ない。
     前訴第一審判決には,ほかにも明らかに不当あるいは不審な事実認定が数多く存在しており,これらの点からすると,前訴第一審の担当裁判官が行った判決等は,強引に原告を敗訴させようとの違法ないし不当な意図をもって,殊更な歪曲が敢行された,少なくとも,裁判官として付与された権限の趣旨に明らかに背くものであったと結論づけるほかない。
     したがって,職務行為基準説又は違法限定説のいずれの判断基準によっても,国賠法上の違法性及び故意又は少なくとも過失が認められる。
   イ 前訴控訴審
     前訴控訴審判決は,@前訴被告が,武富士過払金返還請求通知書が送付された平成21年6月5日頃以降同年10月頃にかけて,武富士に対する140万円を超える過払金返還の交渉の法律事務を取り扱っていた事実,A前訴被告が,武富士過払金返還請求通知書により,武富士に対する140万円を超える過払金返還の請求の法律事務を取り扱っていた事実についての自白の成立,B前訴被告が本件各相続放棄の申述手続に関与していた事実,C平成15年頃,前訴被告がNの債務整理を受任しており,その後も債務整理が進展しないままであった事実について,いずれも判断を欠いていることが明らかである。
     これら4点の事項は,いずれも前訴の判決に影響を及ぼすべき重要な事項であり,それらについて,前訴控訴審判決は判断を遺脱している。これは,単なる偶然ないし不注意による見落としや勘違い,取り違えの域を超えており,意図的でなければあり得ない。その上,これらの判断遺脱のほかにも,一例を挙げれば,前訴被告が武富士の更生手続に関して作成した一連の各書類上の印影が異なっている点に関し,当事者双方からも裁判所からも全く議論に出ることがなかった事実を突如認定するということまでしている。このように,福岡高等裁判所第4民事部が,公正中立な立場を離れ,原告全面敗訴に導こうという積極的悪意をもって努めていたことは明らかである。
     以上の点からすると,同部が行った前訴控訴審判決は,強引に原告を敗訴させようとの違法ないし不当な意図をもって,殊更な歪曲が敢行された,少なくとも,裁判官として付与された権限の趣旨に明らかに背くものであったと結論づけるほかない。
     したがって,職務行為基準説又は違法限定説のいずれの判断基準によっても,国賠法上の違法性及び故意又は少なくとも過失が認められる。
   ウ 前訴再審
     原告の前訴再審に対し,福岡高等裁判所第2民事部は,原告の指摘する4点の再審事由たる判断遺脱はいずれも存在しないとして再審請求を棄却する決定をした。しかしながら,前訴再審棄却決定の理由付けは,いずれも一見して明らかに著しく法理に反し,理由として全く成り立っていない。
    (ア) 前訴控訴審判決は,上記イAの事実自体(140万円超の過払金返還の請求)については否定の判断をしているが,同Aの事実についての自白の成立については何ら判断をしていない。そして,原告が前訴再審において問題提起したのは,同Aの事実自体ではなく,同Aの事実についての自白の成立についての判断遺脱であり,福岡高等裁判所第2民事部はこのことを認識していた。
      そうすると,同部は,同Aの事実自体についての判断があれば同Aの事実についての自白の成立につき判断する必要はないと理解していたとみるほかない。しかし,それは,明らかに,民訴法上の基本原則の一つである弁論主義第2原則(民訴法179条)に反している。
    (イ) また,前訴再審棄却決定が判断の根拠として摘示する前訴控訴審判決中の箇所は,上記イAの事実(請求)自体に関するものであって,同@の事実(140万円超の過払金返還の交渉)の有無の判断につながるものではない。したがって,当該摘示箇所は同@の事実につき判断があったとする根拠とは到底なり得ない。このほか,前訴控訴審判決のどこにも,同@の事実(交渉)を否定する判断をしたと見られる箇所は見当たらない。
    (ウ) 前訴再審棄却決定は,上記イBの事実が認められないとしてこれを認定しなかったものである旨判示する。しかし,前訴控訴審判決中のどの箇所からそういえるのか,根拠となる箇所を全然摘示しておらず,かかる判示の根拠を一切示していない。そもそも,前訴控訴審判決中のどこにも同Bの事実に関する判断と見られる箇所は存在しない。

      その上,同決定は,同判示の後「かかる消極的認定を前提に」云々と議論を続け,結局,Bの事実とは全然別の事実(本件委任契約に係る紛争の目的価額が140万円を超えることが明らかであったとはいえず,また前訴被告において,そのような認識を有していたものとは認められないこと)について「認定判断」がされているから「この点について判断遺脱はない」と議論をまとめている。つまり,議論の対象事実を,Bの事実から前記「紛争の目的価額」云々の別の事実にすり替えるという不当な立論をしている。
      さらに,同決定は,「Bの事実が認められないとしてこれを認定しなかった」ことを「消極的認定」と呼んで,Bの事実につき前訴控訴審判決が「判断」をしたのか否かを曖昧にしているが,そもそも,「消極的認定」とは,ある事実が存在しないという否定の「判断」をすることを意味する用語なのであり,「判断が存在しないこと」を「消極的認定」と呼ぶことには無理がある。
      このように,同決定は,何の根拠もないのに前訴控訴審判決のBの事実の判断遺脱を否定しようとし,その根拠の欠如を取り繕うため,議論の対象事実のすり替えや「消極的認定」なる概念の潜り込ませを敢行したということであり,誠にもって理不尽極まる論法を行っている。
    (エ) 前訴再審棄却決定は,上記イCの事実に関して,「主要事実の間接事実として位置付けられるものとはいい難い」と判示するが,その具体的理由を示していない。しかし,
  共同相続人のうち多額の債務を負う者が相続を放棄することは世間の実態としてよくあることであるから,同Cの事実は,上記イAの事実を推認させる間接事実として,  前訴の事案解明にとって決して看過することができない極めて重要な間接事実であり,「判決に影響を及ぼすべき重要な事項」に当たると評価すべきものである。  また,同決定は,Cの事実につき「仮にBの事実を推認させる間接事実と位置づけ得るとしても,Cの事実から直ちにBの事実を推認することも困難であり」と判示するが,これは,Cの事実とBの事実が並立してAの事実を推認させる旨の前訴再審訴状の明文の記載に反しており,単なる訴訟当事者の主張の取り違えの域を超えている。  
     以上の点からすると,福岡高等裁判所第2民事部が行った前訴再審棄却決定は,強引に原告を敗訴させようとの違法ないし不当な意図をもって,殊更な歪曲が敢行された,少なくとも,裁判官として付与された権限の趣旨に明らかに背くものであったと結論づけるほかない。
     したがって,職務行為基準説又は違法限定説のいずれの判断基準によっても,国賠法上の違法性及び故意又は少なくとも過失が認められる。
   エ 前訴抗告許可申立て
     前訴再審棄却決定は,「主要事実(前記イAの事実)自体についての判断があるので同主要事実についての自白の成立について判断する必要はなく判断遺脱は存在しない」との考え方に立っていると見られる。しかし,この考え方は,明らかに,弁論主義の第2原則に反していて,同原則に関する最高裁判例及び大審院判例等と相反する判断である。
     また,この点が,法令(民訴法179条及び338条1項9号)の解釈に関する重要な事項を含むことも至って明白である。さらに,前訴再審棄却決定は,同Bの事実の存否についての「判断」が前訴控訴審判決中に存在することの根拠を示せない中で「消極的認定」なる概念を介在させることによって判断遺脱は存在しないとの結論を導き出している。しかし,かかる立論が民訴法338条1項9号の解釈として妥当であるか否かは,法令の解釈に関する重要な事項といわざるを得ない。
     このように,前訴抗告許可申立ては,少なくとも民訴法337条2項の要件を満たしており,それを原告は明確に主張している。それにもかかわらず,抗告を許可しないとした決定は,同項違反の瑕疵があるといわなければならない。

     また,前記のとおり前訴再審棄却決定に判例相反の判断があることは一見極めて明白であって,抗告許可の要件を満たすことは民訴法337条2項の条文上明らかであった。さらに,前訴抗告許可申立ての理由書は平成29年2月21日の夕刻午後4時過ぎころ裁判所書記官へ直接手渡しで提出され,その翌日の同月22日に不許可の決定がされているのだから,僅か1日弱の時間で不許可の結論が出されたことになる。しかし,同理由書は,本文の分量で17頁ある上,多くの最高裁判例,大審院判例,文献等を引用しながら4点の判断遺脱事項につき詳細な説明をしており,そのような短時間で慎重十分な審理がされたとは考え難く,状況から察するに,同理由書の提出後,福岡高等裁判所第2民事部は,その内容を一切考慮することなく,問答無用的に不許可の決定を敢行したものと見られる。
     以上の点からすると,福岡高等裁判所第2民事部が行った抗告不許可の決定は,強引に原告を敗訴させようとの違法ないし不当な意図をもって,殊更な歪曲が敢行された,少なくとも,裁判官として付与された権限の趣旨に明らかに背くものであったと結論づけるほかない。
     したがって,職務行為基準説又は違法限定説のいずれの判断基準によっても,国賠法上の違法性及び故意又は少なくとも過失が認められる。
   (被告の主張)
    原告は,独自の見解に基づいて,前訴担当裁判官の事実認定,法律解釈及びその適用における判断が違法又は不当なものであったと論難しているにすぎず,前訴担当裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があるとは認められない。
  (3) 争点3(前訴担当裁判官の職務行為と原告の損害との間の相当因果関係の有無)
   (原告の主張)
    前記一連の裁判の瑕疵が認められれば,それと前訴における原告の敗訴及びそれによる原告の損害との間の相当因果関係は,問題なく認められる。
    少なくとも,前訴が民訴法の常識に沿った順当な裁判であったとしたら,原告の前訴請求の大部分が認容される内容の確定判決に至った相当程度の可能性はあった。したがって,最低限でも,前記一連の裁判の各瑕疵が当該可能性を侵害しているといえる。
   (被告の主張)
    争う。
  (4) 争点4(原告の損害)
   (原告の主張)
   ア 前訴敗訴による前訴被告への請求権喪失による損害
    (ア) 前訴請求金額    348万8307円
    (イ) (ア)に対する抗告不許可決定の日までの遅延損害金
                 63万1717円
    (ウ) 前訴訴訟遂行費用(一部)
     @ 訴え提起手数料    2万1000円
     A 控訴提起手数料    3万3000円
     B 上告提起手数料    4万6000円
     C 再審の訴え提起手数料   4000円
     D 特別抗告提起手数料    1000円
    (エ) (ア)から(ウ)の合計額 422万5024円
   イ 精神的苦痛による損害     600万円
   ウ 弁護士費用      102万2502円
   エ 合計額       1124万7526円
   (被告の主張)
    争う。

第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,前訴担当裁判官が,その付与された権限の趣旨に明らかに背いて権限を行使したものと認め得るような特別の事情があると認めるには足りないと判断するが,その理由は,原判決の「事実及び理由」の第3に記載のとおりであるからこれを引用する。

第3 当裁判所の判断
 1 争点1(裁判官の職務行為についての国賠法上の違法性の判断基準)について
   裁判官がした争訟の裁判について,国賠法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには,当該裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在するだけでは足りず,当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする(昭和57年最判参照)。そして,この理は,口頭弁論調書の記載に関する裁判官の権限の行使についても,それが最終的には争訟の裁判を目的とするものであることに鑑みると,同様と解するのが相当である。
 2 争点2(前訴担当裁判官の職務行為についての国賠法上の違法性等の有無)について
   原告は,前記第2の4(2)(原告の主張)の諸点等によれば,前訴担当裁判官が,強引に原告を敗訴させようとの違法ないし不当な意図をもって,裁判官として付与された権限の趣旨に明らかに背いて,争訟の裁判その他の職務行為を行ったということができるから,前訴担当裁判官の職務行為には,国賠法上の違法性及び故意又は少なくとも過失が認められる旨主張する。
   しかしながら,上記の諸点等をもってしても,前訴担当裁判官が,その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があるとは認めるに足りない(なお,原告は,前訴第一審判決においては武富士過払金返還請求通知書があたかも存在しないかのような事実認定がされたと主張するが,前記前提事実において述べたとおり,前訴第一審判決は,前訴被告が武富士に対し平成21年6月5日付けで242万7705円の過払金の返還請求をした旨を認定し,その証拠として武富士過払金返還請求通知書を掲記しているところである。また,本件各相続放棄の申述手続への前訴被告の関与の有無については,客観的な証拠が乏しく,その判断は必ずしも容易ではないところ,前訴第一審判決はこれについて7点の論拠を挙げて詳細な検討を加えているのであって,いずれも成り立たないことが一見して明らかな稚拙で的外れなものばかりであるとする原告の主張は,心情的にはともかく,当たらないように思われる。)。
   したがって,原告の請求は失当というほかない。

 2 控訴人の当審における主張は,原審における主張の繰り返しか,独自の見解に基づき自らの意に反する前訴担当裁判官の判断について,その付与された権限の趣旨に明らかに背いて権限を行使したものと認め得るような特別の事情があると論ずるものであって,前記1の判断を左右しない。
 3 よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

     東京高等裁判所第16民事部

                裁判官  馬   場   純   夫

                裁判官  片   野   正   樹

裁判長裁判官萩原秀紀は退官のため署名押印することができない。

                裁判官  馬   場   純   夫