令和２年第１１９号 国家賠償請求上告等事件の決定に対する再審申立事件
再審申立人 Ｘ
再審相手方 国
準備書面２
令和２年７月４日
最高裁判所第三小法廷 御中
再審申立人訴訟代理人弁護士 ＊ ＊ ＊ ＊
本件再審申立ての理由（再審事由）については再審申立書（本年４月１６日付け）及び準備書面１（本年５月３１日付け）に記載したところであるが、念のため、さらに以下の説明を補足する。
（なお、再審申立書及び準備書面１中の短縮呼称をそのまま用いている。）
１ 旧民訴法下での上告等棄却の判文
(1) 現行の民訴法が施行（平成１０年１月１日）される以前においては（以下「旧民訴法下」という。）、理由不備・理由齟齬の上告理由（旧民訴法３９５条１項６号）を斥ける際の判決理由としては、最高裁判所は、ほとんどの場合、「原審の認定判断は正当として是認することができ、所論の違法はない」といった判示をしていたようである。
(2) 他方、旧民訴法下では、「その実質は」云々という判示は、「違憲をいうが、その実質は単なる法令違反を主張するものにすぎない」というように、違憲の主張（旧民訴法３９４条、４０９条の２、４１９条の２第１項）を斥ける際に用いられていたようである。
２ 原決定の問題点
(1) つまり、旧民訴法下では、上告理由として理由不備・理由齟齬が提示された場合には、「理由不備・理由齟齬といった上告人が論ずる所の『違法はない』」というふうに、理由不備・理由齟齬の有無という結論につき判断が示されていたということである。これは、そのような判断が存在しないと判決が論理的に成立しないと当時の最高裁判所が正しく認識していたことを示すものと言えよう（但し、そのように理由不備・齟齬なしとの結論を示した点は良いにしても、その理由として「原審の認定判断は正当」などと述べるだけで十分であったのかという疑問は残るのであるが、この点はさておく。）。
このように過去の最高裁判所の判文と比較すれば、前審上告理由が理由不備・理由齟齬に該当するか否かという裁判に影響を及ぼすべき重要な事項について原決定が判断を遺脱していることは、一層明白となる。
(2) また、「その実質は」云々という旧民訴法下では違憲の論点に対して用いられていた判示文言を、理由不備・理由齟齬の場面に流用するという構成ないし議論の枠組みにそもそも無理があるということも、自ずと見えてこよう（なお、「事実誤認」が付け加わっているが、憲法レベルの問題か法令違反レベルの問題かというのとは異なり、理由不備・理由齟齬と事実誤認とが排他的・非両立の関係にないことは、再審申立書及び準備書面１で既に説明したところである。）。
以 上